キネマの神様という小説は原田マハさんの作品で2008年発行の小説。2011年に文庫版が発売されている。
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この作品のあらすじ
キネマの神様は大企業の社内政治に疲れて会社を辞めてしまったアラフォー女性の主人公とマンションの管理人をしている映画とギャンブルをこよなく愛する80歳近い主人公の父親を取り巻く物語となっている。
主人公も主人公の父親も映画を愛しているということで、映画を中心として様々な人々がつながっていき、どんどん話が大きくなっていく。
この物語の面白さ
主人公の父親がハチャメチャな人で心臓病なのに病院でギャンブルをしていたり、80歳近いのに家出して漫画喫茶に泊まったりしているという人間的な面白さが一つ目。私はこの主人公とフーテンの寅さんとが重なってしまった。ハチャメチャだけど憎めないどれだけダメな人間でも凄く愛おしい人間味を感じる。
この主人公の父親は幼少期満州で映画と出会い、映画にのめり込んでいってしまうという映画ファン歴70年の筋金入りの映画ファン。マンションの管理人をしながら管理人室で映画のDVDを借りてきて観てそれの論評を書き残している。この論評好きがブロガーを職業としている私とマッチしてしまいこの主人公の父親に感情移入してしまう。
父親以外にも出てくる人物がみんな素晴らしくて心を温めてくれるのがこの作品の醍醐味かもしれない。
個人的にすごく好きだったところ
この小説は主人公の父親が主人公の気まぐれで書いたニューシネマパラダイスの論評を映画ブログのコメントに書き込むことで、なんと主人公が有名な映画誌の編集部に再就職が決まるところから大きく動き始める。
この映画誌の編集長の息子がインターネットに詳しかったことにより、主人公の父親の論評を連載して発信する映画ブログ?シネマの神様が始まり、80近いおじいさんの映画論評がアクセス数を伸ばす。それがアメリカに住む主人公の後輩の目に止まり、英語版を作ることになり・・・。
そう、私はブロガーという職業なので主人公の父親が論評をずっと書き溜めていたというところからブログにすればいいのにと途中思っていた。それがこの小説では本当になっているのである。私のこころを読み取ったのか?と思えるほどの願ってもない展開でワクワクしながら読み進めるとさすが小説!どんどん願ってもない展開が進んでいくではないか。
普通ではありえない展開ではあるがそれこそが小説の面白さでありエンターテイメント性の高さだと感じる。ブログを通して人がつながっていき、潰れそうな名画座を中心として人々が集まってくる。この物語の後半はもう涙が止まらないのである。おそらくすべての人が感動出来る最高の作品だと確信する。
2008年発行の小説とは思えない
この小説を読んで思ったのがこの小説が書かれたのは今から10年も前だということ。物語の中に硫黄島からの手紙の話が出てくるので2006〜2007年に書かれた小説だということがわかるがその下りがなければ2〜3年前に書かれた話としても不思議ではない。それぐらい今のブログを取り巻く話とリンクするからである。
原田マハという人の作品は今回この作品をおすすめされて初めて読んだがとても私と近い考え方を持った人であり、先見性の有る人だと思うのでこの人の作品をもっと読んでみたいと強く感じた。
「キネマの神様」を読んだ感想まとめ
この小説を紹介してくれた方は原田マハさんの熱狂的なファンで原田マハさんの書いた本を全部読みたいと言っていたが私もこの本を読んだだけで完全にファンになってしまっている。
この小説の中に映画は他人の人生を体験させてくれる素晴らしいものだと書かれているが私は小説もまさにそれであり、自分では想像し得ない素晴らしい人生を体験させてくれる素晴らしい作品だと思っている。
この作品を読んだおかげで私はニューシネマパラダイスという映画を観たい気分になった。こういう気分になるのは村上春樹作品を読んでジャックダニエルを飲みたくなるのと同じ感覚だ。伊坂幸太郎作品を読んでボブ・ディランを聞きたくなるのとも同じ(笑)
久しぶりに心の底から面白いと感じることが出来、涙腺が崩壊した小説だった。この作品はあと2回は読み返したい。本当にそう感じる。
原田 マハ 文藝春秋 2011-05-10
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